リストランテ プリミ・バチ (イタリアン)*3

本当は違う予定だったのだが、急遽、食べに出る。吉祥寺。井の頭公園の目の前、というより焼鳥の「いせや公園店」の向かいといった方が判る人は判るだろう。


実はこの店、15年前ぐらい(ていうかたぶん平成2年の夏)に1回だけ間違って入った事がある。たぶん店名も経営者も変わってないと思うんだけど(自信は無い)、当時は昨日の夜の雰囲気よりも、もっともっと「堅い」感じの本格的レストランだった(店内ちょっと暗めの落ち着いた感じ)。今はずいぶん軽くなった感じがする>まぁ、オレが歳相応になったという事だろうか。


その15年前のある夜、オレと当時の彼女(カミさんだが>ダハ)は吉祥寺で買い物を済ませ、何をするつもりか夜の井の頭公園へ向かった(いや深い意味は無い)。すると、公園に辿り付く前に、突如としてザーザーと大雨が!傘を持ってなかったオレらは「ひゃー」と雨宿りのつもりでたまたま歩いてた先にあった店に駆け込んだわけである。

タキシードを着たお兄さんが低い声で「いらっしゃいませ」と礼をして出迎えてくれる。こちらはずぶ濡れのTシャツ姿にシャンプーとか入ってるマツキヨの黄色いビニール袋姿。「やれやれ」と入った所までは良かった。入ってみると、なんだかちょっと「あれ?オレらかなり浮いてね?」という雰囲気。他のお客様たちはみなジャケット着用に綺麗な格好の大人の女性達という、そこへ、おれら二人が着のみ着のままのマツキヨ帰り姿というそのギャップたるや、デトロイトのクラブに間違って入った日本人観光客レベルだ>判り難い。

「雨宿り&コーヒーだけのつもりで入ったんですけど…」とお兄さん(たぶんソムリエ)に正直に聞くと、「大丈夫でございます」と言うので、「じゃ、コ、コ、コーヒー2つでごめんなさいぃぃぃ」と恐る恐る答えたもんである。向こうのカップルなんかは彼女が誕生日だったみたいで、ロウソク付きのケーキのプレゼント&スタッフによるハッピーバースデーの歌のプレゼント〜みたいなこじゃれた演出まである始末。「ウフフ、素敵なプレゼントありがとう!」という彼女の気持ち&「ここは一丁、気合いれて彼女に素敵なディナーを!そして今日は忘れられない夜に!」と気合が入ってる二人の雰囲気をぶち壊したオレらは、早々にコーヒーを一気のみして覚悟を決めて雨の中を吉祥寺駅にUターンしたのだった。




という思い出の店なのだ。




今になって「入ってみるか!」と着のみ着のままの格好で入ってみる。タキシードを着たお兄さんが低い声で「いらっしゃいませ」と礼をして出迎えてくれる。が、案外、店内は明るい。しかし、来ているお客さん達は、やはり年齢層が高めだ。一応ジャケット姿がほとんどだった(というかオレ以外全員)。やはり、何らかの記念日的なデートラインらしい。隣の席のカップルは彼女の誕生日記念だったようで、途中、スタッフによるハッピーバースデーの歌のプレゼントがあった。イタリア語で。他のお客さん皆も拍手して差し上げる。「またかよ」と思ったオレ。イタリア語で歌うんならもっとビブラート効かしてカンツォーネっぽくやった方がいいぞ。



ところで、料理の方だが、コースをやめてアラカルトで食いたいものだけを選んでシェアしてもらう事に。更にワインもボトルで取るという大盤振舞いを見せる。銘柄とかをもうちょっと知ってればワイン選びも面白いんだろうけどね。というわけでワイン選びはカミさんにお任せ。

  1. じゃがいものスープ
  2. 海老と茸のタリオリーニ
  3. 生ハムとルッコラのピザ(小)
  4. 季節の野菜と地鶏のソテー
  5. ワイン(メルロー・ディ・ボリゴサッコ・ヴァリス・アグリ←たぶん)


腹が減ってた故に最初のスープがとても美味しかった。そして、ワインがとても美味しかったからか、その後の料理がとても美味しく感じられた。「腹が減ってた」と「気持ちよく酔えた」という最強の2トップのスパイスのお陰で大変満足なディナーとなった。冷静に振り返れば、みんなソコソコおいしかったーぐらいか。記憶に残るほどのモノは無いが、さすがにそこら辺のパスタ屋よりは美味しい。同時に、まあ当然だが、そこら辺のパスタ屋よりは高い。ていうか、この手の店で値段を考えるのは最初から選ぶ店を間違ってるとしか言いようが無い。と、そこまで言うほど高い店ではないのだが。


とりあえず、この15年間のマツキヨの呪いを解いた夜となったのである。その後、夜の井の頭公園に二人は…





いまさら行くはずもないのであった。